第43回日本医史学会福岡地方会がコロナ禍を乗り越え開催
医学・医療発展の中、原点・源流を確かめる「温故知新」
2月17日、福岡市の九州大学医学歴史館で開かれた第43回日本医史学会福岡地方会(会長=原寛・原土井病院理事長)を取材しました。名誉教授、現役教授、開業医、研究者ら約30人が参加しました。非常に有意義な会で、「温故知新」という言葉を思い出しました。
日本医史学会は1927年(昭和2年)に設立された100年近い歴史をもつ学会です。前身を含めると130年以上となります。医学をはじめ歯学・看護学・薬学分野、医療による病の癒しと社会・文化の関わり、先人の事績、漢方医学などの歴史をテーマにし、研究・普及を目的にしています。医学・医療の発展が目覚ましい中、近年はその原点・源流を確かめるように、活動も注目を集めています。
地方で医史学の花を咲かせよう
2022年の日本医史学会総会・学術大会は愛媛県松山市で開催されましたが、その時の公開シンポジウムのタイトルが「地方で医史学の花を咲かせよう」でした。さて、この度の福岡地方会です。年2回開いていますが、コロナ禍で中断し、久しぶりの開催でした。
ヴォルフガング・ミヒェル九州大学名誉教授が「稲葉正則と西洋医学の導入」と題して、講演。江戸時代前期~中期に老中として活躍した小田原藩主、稲葉正則が藩医をオランダ人医者に学ばせ、西洋文化導入にも取り組んでいた事績を紹介しました。
九州はわが国西洋医学揺籃の地
九州は1557年、ポルトガルの宣教師で医師でもあったルイス・デ・アルメイダが府内(現・大分市)にわが国初の洋式病院を開き、わが国最初の外科手術が行われた地でもあり、その後、長崎は西洋医学の窓口となるなど、わが国西洋医学揺籃の地です。福岡地方会はそれからの歴史を掘り起こし、先人に学ぼうと活発になってきています。
当日はほかに、小林晶氏「作曲家ラフマニノフとMarfan症候群」、権藤寿昭氏「北村季吟&本居宣長~江戸時代の二大『源氏』学者でもある町医者」、朔元則氏「外科学の発展に貢献した人たち~その③人名を冠した手術・病気」、佐藤裕氏「『臨床と研究』創刊100年を寿ぐ」、鈴木友和氏「近世藩立医育施設の総合評価に向けて(3)」、原寛氏「6代原三信の解剖書と外科免状」、丸山マサ美氏「絵画『研究室の三宅速教授』」木村専太郎氏「カルシウム沈着が頸動脈から消えた」の発表がありました。
次回開催は8月10日(土曜)の予定。(藤野博史)
ヴォルフガング・ミヒェル氏と、講演を聴く参加者 |
久しぶりの開催で、活発な論議が交わされた |
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